屋久島 昆虫 本 ガイドブック 改訂版

「屋久島の昆虫ガイド」(旧作の改訂版)発行

改訂本データ

著作・編集 =中田隆昭
監修=福田晴夫
発行元=公益財団法人屋久島環境文化財団
発行年月日=2013.03.31
装丁=B6版・105頁・カラー
読者ターゲット=小学校中学年〜中学生、大人入門書。
価格=¥800

改訂留意点(全般)

1.
小改訂。ボリューム据え置き。
2.
掲載写真変更。より全体がわかる生態写真や標本写真。
3.
最新知見折り込んだ解説文章。
4.
リニューアルした生息分布リスト。最新分類に伴った学名記載。

改訂留意点(著者。WEBのみに抜粋表示)

ヤクシマミドリシジミの生態写真

 表紙に使用した写真は、有田斉氏(ここ近年、撮影のために屋久島に通い詰めた、壮大な苦労の中の1枚。関西在住)による感激的1枚。解説ページには同じく、もう二度と撮れないであろう(本人談)と評される雌のクローズアップ。蝶類の撮影を少しでもかじられた事のある諸兄なら、その苦労話で軽くビールの二、三本空けてしまうほどのしろもの。まして、テリトリーを張る雄の勇姿などコンテストの上位まちがいなし。
 快く掲載を承諾された氏に、通常では考えられない中田からのオンリー口頭謝辞。これに対して氏は「いいよ、いいよ。」。この人は、肉体を人間に似せた神、に違いない。

ヤクシマルリセンチ&ヒラズゲンセイ

 ヤクシマルリセンチコガネ:この解説ページのすばらしい標本写真は、伊藤ふくお氏(昆虫図鑑などの標本撮影にかける情熱ははんぱじゃない。近年作品に「バッタ・コオロギ・キリギリス生態図鑑」−北海道大学出版会−。関西在住)の手によるもの。中田所有標本を氏のスタジオに送り撮影された原板を使用。じつはその背面写真は畳一畳ほどに拡大されて、自然島の事務所入り口天井に、以前から飾られてあった。旧版の解説頁では中田のぶれた後ろ向き生態写真であったが、今回改訂版に間違いなくインパクトを与え、かつ見る者を納得させるものとなった。この紫色を見てググッとこない人なんているのだろうか。
 ヒラズゲンセイ:屋久島島内在住の井上氏、三宅氏が採集され中田に恵与された標本を使用。初めて見る者はクワガタの仲間かと思う位、立派な大あごを持つ雄。では雌は? 今回の頁はこれを意識して、頭部を下向きに配置。その形態差歴然の一枚となった。両氏にうかがうと本種を狙って採ったものではなく、庭先で見つけたり道路端にいたり、だったらしい。もし次に中田が見つける幸運に巡り会えたら、枚数を気にしないでよいデジカメで、考えられ得るすべての角度から激写してやる。

昆虫を楽しむ

 オオミズアオ:頁の最初から屋久島の大物登場である。この屋久島亜種、蛾の宿命とも言える「光に寄っていく」性質が前面に出る種で、街灯にぶつかるわ地面にひっくり返るわで、羽化後綺麗な翅形を保つ事がへたくそなやつだ。体色・顔かたちで一般自然愛好者に好感度を与えているが、こいつには、クルクルっと巻いたストローのような口が、「ない」。さあ、そんな飲まず食わずの荒波社会に、もうすこしで飛び出していこうという、羽化の後、羽を伸ばしきろうとしているシーンだ。そこだけ明るく見えた林床。屋久島の森は、観客の知らない「演劇」を、それも不定時に開演している。

「種」をどこまで分けるか

 クワガタムシ昨今:ノコギリクワガタ。ご存知でしょう、「スイギュウ」と」呼ぶ地域もあります。あの見事な造形の大あごを有するノコギリクワガタ(総称)にいま、いくつの亜種名が存在するかしってますか?
ノコギリクワガタ        Prosopocoilus inclinatus inclinatus
ミヤケノコギリクワガタ     Prosopocoilus inclinatus miyakejimaensis
ミクラノコギリクワガタ     Prosopocoilus inclinatus mikuraensis
クロシマノコギリクワガタ    Prosopocoilus inclinatus kuroshimaensis
ミシマイオウノコギリクワガタ Prosopocoilus inclinatus mishimaiouensis
クチノエラブノコギリクワガタ Prosopocoilus inclinatus kuchinoerabuensis
ハチジョウノコギリクワガタ Prosopocoilus hachijoensis
アマミノコギリクワガタ     Prosopocoilus dissimilis dissimilis
トカラノコギリクワガタ     Prosopocoilus dissimilis elegans
トクノシマノコギリクワガタ Prosopocoilus dissimilis makinoi
オキノエラブノコギリクワガタ Prosopocoilus dissimilis okinoerabuanus
オキナワノコギリクワガタ   Prosopocoilus dissimilis okinawanus
イヘヤノコギリクワガタ     Prosopocoilus dissimilis hayashii
クメジマノコギリクワガタ    Prosopocoilus dissimilis kumejimaensis
ヤエヤマノコギリクワガタ   Prosopocoilus pseudodissimilis

 これだけあるのですよ(青色はノコギリクワガタに「4種」いる事をしめしている)。大隅諸島がホットな事、わかりますか?クロシマ(黒島)・ミシマ(三島)・クチノエラブ(口永良部)に亜種がいる事になっていますよ。では、わが屋久島は?
 このように分けられた事実を認めた上で、一般的に考えられる事は、たとえば屋久島で採ったノコギリクワガタを、おとなりの口永良部にお土産で持っていっては、「いけない」と言う事です。生体で持ち込んで交雑個体が生まれると将来、訳がわからなくなる、から。
 改訂版刊末のリストでは学名表記に(お気づきではないでしょうが)、思いの外時間がさかれました。ハイ。

 


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